相続対策~再婚前の子供がいる場合~

被相続人の子であれば、前婚の子も再婚の子も法定相続分は同じ

前婚で子供がいる人と結婚し、その配偶者が亡くなったとします。この場合、自分との間に生まれた子供だけが相続するのかというとそうではありません。
前婚との間に生まれた子供も、自分との間に生まれた子供と同じ割合の法定相続分をもつ相続人になります。

理由はとてもシンプルです。被相続人から見れば同じ子供だからです。そのため相続分も同じということになるのです。
事例を2つ示します。被相続人に、前婚で子供がいたケースと、被相続人が連れ後に財産権を与えるためのケースとで対応策が異なります。

【事例1】前婚で子供がいた配偶者が亡くなったケース

ご主人が亡くなられた奥さんが相続登記手続き(不動産の相続による名義変更)にこられることがよくあります。

その際、前婚との間にできた子供の存在を忘れたまま分割案を考えておられることがあります。相続登記の手続きに入り、必要な戸籍(被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍)が全てそろったときになって、前婚の子供の存在を思い出した、あるいはご主人からその事実を聞かされておらず、初めて知り、驚かれたといったケースもあります。

前婚とのあいだに子供がいることを伝えるのは大切なことです。
けれど、「言いづらい」話ですし、結局伝えないまま亡くなることもあるかもしれません。

このような場合、登記の手続きをすすめるためには、前婚の子供の了承が必要になるのですが、やっかいなのは全く面識がないときです。どんな生活をしているかわからないですし、被相続人のことを恨んでいることもあるでしょう。

そのような相手に対して、「お父さんが亡くなりました。○○さんも相続人になりますから、一度相続財産の分割のお話がしたく、連絡をいただけませんでしょうか」といったような①被相続人が亡くなったこと、②○○さんが相続人になったこと、③相続財産があること、④話し合いの場をもちたいこと、などと通知するのは当人にとって大きな負担になります。その相手が「相続しません。」といってくれればいいですが、「私のもらえる財産はどれだけありますか?」などと言われると話もどんどん重たくなります。

こんな場合に、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てるのもいいかもしれません。調停を申し立てると、双方に呼び出し期日を伝える封書が届き、期日に家庭裁判所に出廷するよういわれます。
家庭裁判所にいくと、相手方と顔を合わさないよう、別々に待合室に案内されます。その後、申し立てた方が先に調停委員2名のいる部屋に呼ばれ、そこで調停委員に申立人の意見や案を聞いてもらいます。
それが終わると、もう一方が部屋に呼ばれて、相手側の意見や案を聞かされたのち、次に自分の意見や案を聞いてもらいます。そういったことを繰り返した上で、課題があれば次回期日が設定されます。

これを繰り返しながら、双方の妥協点が見つかれば調停成立ということになります。調停が成立すると、後日家庭裁判所より調停調書がそれぞれに送られてきます。この調停調書は確定判決と同じ効力があり、相続登記手続きを行う際、この調書さえあれば相続人は登記手続きができます。登記手続きは通常司法書士に依頼します。

【事例2】連れ子をつれて再婚したが、再婚相手が亡くなったケース

ご主人は初婚、奥さんは再婚、奥さんには前婚の子供が1人おり、ご主人は自分の子供ではないが非常に可愛がられ、自分の子供をつくってこの子への愛情が薄れてしまっては可哀想と、子供をつくらないまま、かつ養子縁組もしないまま亡くなりました。

この場合、相続関係は、「子供のいない夫婦」と同じケースになりますので、奥さんの連れ子に相続権はなく、亡くなったご主人の親がご健在であれば奥さんと共同相続人になりますし、すでに亡くなっている場合は、ご主人の兄弟がいればその兄弟姉妹と共同相続人になります。このようなケースでは、奥さんの連れ子に相続権を与えるためには、養子縁組の手続きをして養子にしておかなければなりません。

【連れ子の場合の「氏と戸籍」について】
たとえば、父母の婚姻前の父の氏が「甲」、母の氏が「乙」で、婚姻の際に父の「甲」を名乗り、筆頭者も父にしました。
この夫婦が離婚する際、母が婚姻前の氏「乙」に戻したとします。
そして、離婚した母は、新しく自分の戸籍をつくることにしました。この時点で子供はまだ別れた父の戸籍に残っており、氏も「甲」のままです。
家庭裁判所に「子供と母の氏が違うので母と同じ氏に変更したい」旨の申立をし、家庭裁判所の許可を得て、役所に氏の変更届と入籍届を提出して初めて、氏が「乙」に変更し、母の戸籍に入ります。
これと同じように、母が再婚して「丙」の氏を名乗ることとし、再婚相手の戸籍に入った場合は、連れ子は母の前の戸籍に残ったままで、氏も「乙」のままです。
「丙」の氏を名乗るためには、①家庭裁判所の許可を得て役所へ氏の変更届と入籍届を提出するか、②再婚相手が連れ子と養子縁組をし「丙」の戸籍に入らなければなりません。